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「え、今のなに?」危険を訴える声が届かなかった旅先での出来事

  • 執筆者の写真: 渡邉俊幸
    渡邉俊幸
  • 4月15日
  • 読了時間: 3分

こんにちは、渡邉俊幸です!


避難指示を出しても、人がすぐに動かない——。そんな悩みを抱える自治体職員の方は多いのではないでしょうか。特に難しいのは、「状況として見えない時」。つまり、その場にいる人が危険を体感できていないときです。今日は、私自身の体験をもとに、「見えない危険をどう伝えるか?」について考えてみたいと思います。


観光地で遭遇した“見えない危険”

もう何年も前になりますが、青森を友人たちと旅行していた時のことです。ドライブ中に通り雨に遭遇し、前がほとんど見えないほどの雨が一気に降ってきました。


しばらくして雨はやみ、私たちは川沿いの観光地へ。見学を終え、川沿いの道を歩いて駐車場に戻ろうとしていたとき、川辺の細い道に、1台の車が入ってきました。


車内から身を乗り出した女性が助手席側の窓を開け、私たちに向かって何かを叫んでいます。ただ、こちらには内容がよくわかりません。必死で何かを伝えようとしているのは分かるのですが、突然のことで、逆にこちらはキョトンとしたまま。そのまま私たちは特に急ぐこともなく、駐車場に向かいました。


後で分かったのですが、その方は施設の管理者で、「先ほどの雨で川が急に増水し、上流に人が取り残されたので状況を確認しに行くところ」だったそうです。つまり私たちが歩いていた川辺の道も、増水すれば危険になる可能性があったわけで、「ここにいては危ない」ということを私たちに伝えたかったのだと思います。


なぜ私たちは動かなかったのか?

その場面を今振り返ってみると、「叫ぶだけでは伝わらない」ということがよく分かります。私たちの目の前の川は、多少濁ってはいたものの、激流というほどではありませんでした。空も晴れていて、ドライブ中の豪雨はもう「過去のこと」になっていました。


そうした状況で、知らない人に急に車の中から叫ばれても、「えっ?何のこと?」という戸惑いしか残らなかったのです。


本当に伝えるべきことは何だったのか?

今になって思えば、例えばこう伝えられていたら、もっと早く状況を理解できたかもしれません。


「私は施設管理者です。先ほど大雨が降って川の水が急に増えています。この上流では人が取り残されていて、この場所も危険になる可能性があります。今すぐ駐車場に戻って、安全な場所へ移動してください。」


伝えてほしかったこととしては、


  • 誰が警告を発信しているのか(信頼できる立場か)

  • 起きている現象(上流で人が取り残されている・増水が発生している)

  • それがもたらす危険(この場所も危ない)

  • 今すべきこと(すぐに移動)


です。


加えて、私たちは観光客だったので、土地勘がありません。このため、「この道路も以前、水位が上がって通れなくなったことがあります」というような過去の事例が一言添えられていたら、よりイメージが湧いたと思います。


見えない危険をどう伝えるか?

この体験を通して感じたのは、「危ない!」と叫ぶだけでは、人は動かないということ。特にその人にとって“体感できない危険”であればなおさらです。


災害時にも同じことが起きています。遠隔地で発生し、実際には揺れを体感していない場合の津波避難の呼びかけや、上流部で降った雨によって晴れて天気の良かった場所に時間を置いて押し寄せて洪水になる例などです。


同じような場面に、あなたが居合わせたとしたら、どのような言葉をかけられたらすぐに動こうと思えますか?その問いをもとに、私たち自身の発信内容も見直していきましょう。



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