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“見せるだけ”で終わらせない。内水氾濫対策に効く、下水道水位の伝え方

  • 執筆者の写真: 渡邉俊幸
    渡邉俊幸
  • 4月11日
  • 読了時間: 4分

更新日:4月14日

こんにちは、渡邉俊幸です!


横浜市のホームページには、下水道の「水位」に関する表示システムが導入されています。2025年4月の時点では横浜駅と戸塚駅周辺の10地点の水位が確認できるそうです。都市型の内水氾濫に対するソフト対策として期待できる仕組みであるため、どのようなことが公表されているのかと、もっとよくする方法について述べていきたいと思います。

このシステムのユニークな点は、大雨によってマンホールから水があふれる可能性があるかどうかを見せている点です。下水道水位情報のページでは、現在の水位に加えて「溢水の恐れあり」という注意も出る仕組みが構築されており、「もうすぐ溢れそうだ!」ということが視覚的に分かります。

マンホールの中の水位が「見える」仕組みが構築されている
マンホールの中の水位が「見える」仕組みが構築されている

また、水位情報の閲覧ページには内水氾濫のハザードマップも掲載されており、想定上の浸水の深さも同時に確認できるような工夫が凝らされています。

内水氾濫を想定したハザードマップも掲載されている
内水氾濫を想定したハザードマップも掲載されている

もっとよくするためにできる工夫

横浜市が導入した下水道水位の見える化策ですが、少し見せ方を工夫するとより分かりやすく、また、利用者にとって使いやすいものにすることができます!例えば今のシステム上で気になった点と改善の方向性を挙げると次のようになります。


「なぜ注意が必要なのか」が伝わりづらい

下水道の水位の数字を示したり、内水氾濫の想定を示すだけではどのくらい危ないのかがピンときません。たとえば「以前ここで何が起きたか」を写真付きで出すと、リアルな危機感につながります。「○年○月には、この地点全体が○cm冠水。溢れた水は地下街に流れ込んで・・・」といったように、過去の災害例を見せていくと説得力が出ます。


表示される言葉が専門的

「溢水の恐れあり」というシグナルが表示される仕組みですが、そもそも「溢水」という言葉は読み慣れない/聞き慣れない言葉です。こうした言葉があるとコミュニケーションを妨げてしまうので、「マンホールから水があふれる可能性がある状態です」など、ひとこと補足があると親切です。


増えるスピード感が知りたい

現在の水位は確認できますが、大雨によって水位がどのくらいのスピードで上がってきたのかという経緯は分からない仕様です。「今降っている雨によって10分でここまで来た!」など、動きの速さがわかると行動の判断につながります。


「なにをもとに警告を出してるか」が不明瞭

どの水位を超えたら「溢水の恐れあり」になるのか。そこが分かれば、「今どのくらい危ないのか」が読み取りやすくなります。


なぜこの場所にあるのか?

戸塚駅や横浜駅に設置されている下水道の水位計。しかし、なぜここにあるのかはあるのは説明が欠けています。「浸水リスクが高い場所だから」など、「選ばれた理由」を説明していくと、納得感が生まれます。


水位情報が狭い範囲に複数箇所ある意味は?

水位計は狭い範囲に複数設置されているケースがあります。しかし、なぜそうしているのかは不明瞭です。「近隣の複数の地点で同時に水位が上がっていれば、広い範囲に危険が及んでいる」「点ではなく面で把握するために、複数の場所を監視している」といった点も網羅されるとさらに丁寧です。

戸塚駅の下水道水位計の設置箇所は隣接しているところも
戸塚駅の下水道水位計の設置箇所は隣接しているところも
水位情報がないところはどうするか?

水位情報がないエリアの場合は内水氾濫の危険性をどう判断したらいいのかまで書いておいたり、今後の整備予定なども入ってくるとさらに分かりやすくなります。


まとめ

水位の見える化は、災害リスクへの「気づき」や、大雨時の行動を促す第一歩です。


せっかくの情報が、ただの数字で終わらないように。意味が伝わる形にすることで、行動へとつながる。そんな工夫を、これからも一緒に考えていきたいと思います。



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